「それでは、体力が極めて高かった渡辺さんのお父さんが、真剣で立ち会うことを考えるようになったことには一種の必然性があったということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。そして、父の行動を分析すると、僕と同じで、やりたいことしかやらないタイプです。」

「『やりたいことしかやらない』ということは、草書体についても言えるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。父は、祖父がやって見せた、孟宗竹を瞬時に3つにする秘技ができなかったのだと推定しています。」

「幼児期から抜刀術の名人になるための天才教育を受けていても、孟宗竹を瞬時に3つにする秘技はできなかったということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。孟宗竹を瞬時に3つにする秘技ができる年になるころには、動体視力が低下してしまっているためです。」

「なるほど」と町会長。

「おそらく、祖父は、毎日何里走ればできるようになると自分の体験を話したと思いますが、親子の経絡の連動性のため、同じ距離を走ったのでは、孟宗竹を瞬時に3つにする秘技はできなかったはずです。」

「なるほど。それで座禅を組んだり、滝に打たれたりする修行をしたということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。草書体の古文を読んだのも同じ理由だと推定しています。」

「それでは、蔵の中で渡辺さんが見た、草書体の本は、抜刀術に関することが書かれていたということになりますね」と町会長。

「おっしゃる通りです。渡辺家は、江戸時代に財力があったようなので、改易された藩に武術の秘伝書を持っている人がいるか、人を使って調べさせ、買い取らせていたのだと推しています。」

「江戸時代に武術の秘伝書を書くような人は、親子の経絡の連動性から考えて、渡辺さんのお父さんより体力があると考えられるということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「しかし、渡辺家は、なぜ、そのようなことをしたのでしょうか」と町会長。

「抜刀術は立ち会えば、死ぬか生きるかという状態になるので、剣術家のように全国に名が知られている道場を回って修行するということができません。」

「なるほど。武術の秘伝書を読めば、秘伝書を書いた人が、武術家としてどのくらいのレベルにあるのか見当がつくということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それでは、お父さんは、孟宗竹を瞬時に3つにする秘技ができなかったので、渡辺家に伝わる武術の秘伝書を読み漁ったということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。秘伝書は、江戸時代に書かれたものばかりでなく、鎌倉時代や戦国時代に書かれたものもあったでしょうから、読むのは大変だったと思います。」

「しかし、孟宗竹を瞬時に3つにする秘技を習得したくて、必死に読んだということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。祖父が、秘伝書が読めるようになるために、草書体の読み方を幼児期から教えていたのだと思いますが、どうしても読めないものは、祖父に聞けば読み方を教えてくれたのだと思います。」

「それで、『おじいさんは頭がよかった』と言ったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2021/5/28

<筆者の一言>
半年ぐらいして歯の治療に行った。その時、『若い頃、1シーズンに60日スキーをしたことがある』と話した。院長も若い頃スキーに夢中になっていたが、『1シーズンに60日スキーをするのは不可能だ』と言った。『中央高速を150キロくらいで飛ばして日帰りスキーをすれば、可能です』と説明した。院長は『なるほど。それならできる』と言った。

しかし、院長はそれが気に入らなかったらしく、治療が一通り終わったあと、若いS系の女性に歯石を取らせた。S系だと分かったのは、治療がとても痛いからだ。筆者が痛さで首をねじっているのに、遠慮なく治療をする。そして、『ここ痛いですよね』と言って虫歯と思われるところを治療器具で何度も押した。筆者が痛さでのけぞっているのに、お構いなく何度も押したのだ。

そして、『院長、虫歯です』と叫んだ。すると、院長が『なにっ!』と言いながら、人間とは思えない速さですっ飛んできた。『院長は数ヶ月以内に終わってしまう』と思った。やるなと言った自己治療をやっているのだ。<続く>

2024/5/15